昭和37年に最初の全総が策定されて以来、現在は五全総まで進んでいます。
すべての全総は、多かれ少なかれ県別に関東や近畿など地域区分をしたうえで、
各地域個々の目指す目標,計画を打ち立てています。
そして一全総から地域格差の是正を目標のひとつとして位置づけられ、
三全総からは「定住構想」を打ち立てて歴史や環境に応じた独自性のある地域を目指し、
さらに五全総では「参加と連携」を目標達成のための戦略として、
全国一律ではなく地域独自の国土計画を委ねている方式をとっていることから、
「地域」というブロック分けは全総計画にとって重要な位置を占めていると考えられます。
一全総
昭和37年に策定された一全総の地域区分は表1の通りです。
表1 一全総の地域区分
地域 | 都道府県名 |
北海道 | 北海道 |
東北 | 青森,岩手,宮城,秋田,山形,福島,新潟 |
関東 | 茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉,東京,神奈川,山梨,長野 |
東海 | 岐阜,静岡,愛知,三重 |
北陸 | 富山,石川,福井 |
近畿 | 滋賀,京都,大阪,兵庫,奈良,和歌山 |
中国 | 鳥取,島根,岡山,広島,山口 |
四国 | 徳島,香川,愛媛,高知 |
九州 | 福岡,佐賀,長崎,熊本,大分,宮崎,鹿児島 |
一全総は9地域に区分されていました。一全総における地域区分の特徴として、長野県が関東に区分されていることが挙げられます
長野県が関東に区分されたのは一全総のみで、新全総からは中部地方に区分されています。また、一全総では沖縄はありません。
これは、想像がつくと思いますが、まだ沖縄が日本に返還されていないためです。
新全総
昭和44年に策定された新全総の地域区分は表2の通りです。
表2 新全総の地域区分
地域 | 都道府県名 |
北海道圏 | 北海道 |
東北圏 | 青森,岩手,宮城,秋田,山形,福島,新潟 |
首都圏 | 茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉,東京,神奈川,山梨 |
中部圏 | 岐阜,静岡,愛知,三重,富山,石川,福井,長野,滋賀 |
近畿圏 | 福井,三重,滋賀,京都,大阪,兵庫,奈良,和歌山 |
中四国圏 | 鳥取,島根,岡山,広島,山口,徳島,香川,愛媛,高知 |
九州圏 | 福岡,佐賀,長崎,熊本,大分,宮崎,鹿児島 |
新全総については、まず、重複する県ができたことが特徴として挙げられます。
三重県,福井県,滋賀県が中部圏と近畿圏に重複して扱われています。
三重県については一般的に名古屋圏に含まれるものの、言葉のイントネーションなどは関西弁の傾向が見られることから、
このような区分は妥当であるように思われます。福井,滋賀についても、おそらく同様であると考えられます。
いずれにしても、新全総では、複雑な地域区分となったといえるでしょう。
一全総の区分でも触れたように、長野県が関東から中部へと移行しました。特に新全総では、関東ではなく首都圏として区分しているため、
長野県が中部に含まれるのは納得がいくものといえます。
そして、新全総の最大の特徴のひとつとして、地域名に”圏”がついていることが挙げられます。
新全総の開発方式は「大規模プロジェクト構想」ですが、このように圏域で示すことにより、各圏域を、
または圏域内を高規格交通網で結ぶという開発方式をより強く打ち出せたのではないか、と感じましたがどうでしょうか?
特に、中国,四国地方については、ひとつの圏域としてひとまとめになっています。
また、新全総でも沖縄は存在しません。沖縄が返還されたのは昭和47年です。
三全総
昭和52年に策定された三全総の地域区分は表3の通りです。
表3 三全総の地域区分
地域 | 都道府県名 |
北海道 | 北海道 |
東北 | 青森,岩手,宮城,秋田,山形,福島,新潟 |
関東 | 茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉,東京,神奈川,山梨 |
東京圏 | 埼玉,千葉,東京,神奈川 |
中部 | 岐阜,静岡,愛知,三重,富山,石川,福井,長野,滋賀 |
北陸 | 富山,石川,福井 |
近畿 | 福井,三重,滋賀,京都,大阪,兵庫,奈良,和歌山 |
大阪圏 | 京都,大阪,兵庫 |
中国 | 鳥取,島根,岡山,広島,山口 |
四国 | 徳島,香川,愛媛,高知 |
九州 | 福岡,佐賀,長崎,熊本,大分,宮崎,鹿児島 |
沖縄 | 沖縄 |
三全総では、特定の地域をさらに絞り込んだ地域ができました。
それに該当する地域は、関東,中部,近畿のいわゆる3大都市圏です。
関東については東京圏、中部については北陸、近畿については大阪圏が指定されています。
関東と近畿についてはその地域内でも特に都市化している地域、
中部については異なる気候,文化,交流等を持ち合わせていることから北陸が別に指定されています。
また、新全総と同様に、福井,三重,滋賀の3県は中部と近畿に重複して指定されています。
特に福井においては、中部,北陸,近畿と3地域に属していることは、興味深いです。
地域が細分化されたことについては、三全総の開発方式が定住構想であることから、
より地域の特質を踏まえた計画を策定するためと考えられます。
そしてこの三全総からは、初めて沖縄が計画地域に含まれるようになりました。
四全総
昭和62年に策定された四全総の地域区分は表4の通りです。
表4 四全総の地域区分
地域 | 都道府県名 |
北海道 | 北海道 |
東北 | 青森,岩手,宮城,秋田,山形,福島,新潟 |
関東 | 茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉,東京,神奈川,山梨 |
東京圏 | 埼玉,千葉,東京,神奈川 |
中部 | 岐阜,静岡,愛知,三重,富山,石川,福井,長野 |
北陸 | 富山,石川,福井 |
近畿 | 滋賀,京都,大阪,兵庫,奈良,和歌山 |
中国 | 鳥取,島根,岡山,広島,山口 |
四国 | 徳島,香川,愛媛,高知 |
九州 | 福岡,佐賀,長崎,熊本,大分,宮崎,鹿児島 |
沖縄 | 沖縄 |
四全総の地域区分では、大阪圏がなくなったこと、
中部と近畿において重複する県がどちらか一方のみに属するようになったことが特徴として挙げられます。
かなり推測で主観的ですが、これは、重複して計画の方向性があいまいになることを避けたものと考えられます。
五全総
平成10年に策定された五全総の地域区分は表5の通りです。
表5 五全総の地域区分
地域 | 都道府県名 |
北海道 | 北海道 |
東北 | 青森,岩手,宮城,秋田,山形,福島,新潟 |
関東 | 茨城,栃木,群馬,埼玉,千葉,東京,神奈川,山梨 |
中部 | 岐阜,静岡,愛知,三重,長野 |
北陸 | 富山,石川,福井 |
近畿 | 滋賀,京都,大阪,兵庫,奈良,和歌山 |
中国 | 鳥取,島根,岡山,広島,山口 |
四国 | 徳島,香川,愛媛,高知 |
九州 | 福岡,佐賀,長崎,熊本,大分,宮崎,鹿児島 |
沖縄 | 沖縄 |
最新の五全総では、北陸が中部から独立し、また東京圏が消滅したことにより、完全に各県が各地域に振り分けられました。
五全総では、地域計画を提案という形にとどめ、各地域に委ねる戦略をたてていることから、
わざわざ重複する県を設定する必要がなくなったためと推測しています。
地域区分の変遷は、以上の通りです。北海道,東北,九州については、
一全総から変化することなく策定されていることがわかります。
また、新潟が東北というのは全総の地域区分の特徴といえるでしょう。
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