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大規模プロジェクトな新幹線計画
このページは'98/11/28に更新しました。
 新全総の策定年次はバリバリの好景気であった昭和44年です。 と、いうわけで、その頃の計画を見るのは結構楽しいものです。 逆に、自然環境保護を訴えかけている方々が反面教師として用いることのできる計画とも言えます。
今回は、新全総施行期間の新幹線計画にスポットを当てます。
 ただし、この計画は、新全総本文に記載されている訳ではなく、 あくまでも施行期間中に策定された新幹線計画です。 でも、明らかに新全総の影響を受けています。 参考文献は、全国総合開発計画図集2です。
それでは、チェック!!


 いきなりですが、新全総本文中にこのような記述があります。

「仙台・福岡間の高速幹線鉄道を建設し、順次、全国的高速幹線鉄道網を整備する。」

 新全総における開発方式は、大規模プロジェクト構想です。
 つまり、地域格差等の問題に対応するために大規模な開発を促進しようという ことなのですが、その具体的な計画内容は、現在の感覚でみるとかなり無理のある構想だと感じます。

 そこで、当時の新幹線計画をまとめました。

 ただし、以下に述べる新幹線計画は新全総本文に記述されている訳ではありません。 新全総が策定されてから整備計画として発表されたものです。注意してください。

 始めに、計画が実行された場合の新幹線網を下の地図で確認して下さい。

地図
図1 新全総策定後の全国高速幹線鉄道計画

 これは、具体的に完成予定年次が示されている路線を示したものです。
 それ以外にも、仙台と秋田を結ぶ「東北横断新幹線」や、 東京から水戸経由で福島とを結ぶ「常磐新幹線」等も計画に含まれていました。
 これらを考慮すると、事実、大規模な新幹線のネットワーク化を目指したことがわかると思います。

 これらの新幹線の経由,完成予定年次等を下の表1に示します。

表1 新全総策定後の全国高速幹線鉄道計画
路線名 区間・経由 距離
(km)
完成予定
年次
建設の有無
(昭和60年)
建設の有無(現在)
北海道新幹線 青森−函館−札幌 370 昭和54年 × ×
札幌−旭川 130 昭和60年 × ×
北海道南回り新幹線 札幌−室蘭−長万部 180 昭和60年 × ×
東北新幹線 東京−盛岡 496 昭和52年 大宮−盛岡は開業 完成
盛岡−八戸−青森 170 昭和54年 × 盛岡−八戸は開業
羽越新幹線 青森−秋田−新潟−富山 560 昭和58年 × ×
奥羽新幹線 秋田−山形−福島 270 昭和60年 × 山形−福島はミニ新幹線で開業
上越新幹線 東京−新潟 290 昭和52年 大宮−新潟は開業 完成
成田新幹線 東京−成田 65 昭和52年 × ×
北陸新幹線 東京−高崎−長野−富山−金沢−福井−大阪 690 昭和54年 × 東京−高崎−長野は開業
北陸・中京新幹線 敦賀−岐阜羽島−名古屋 50 昭和60年 × ×
中央新幹線 東京−甲府−名古屋−奈良−大阪 480 昭和58年 × ×
山陽新幹線 岡山−博多   昭和50年 完成 完成
中国横断新幹線 松江−米子−岡山 150 昭和60年 × ×
山陰新幹線 大阪−鳥取−松江−下関 550 昭和60年 × ×
四国新幹線 大阪−明石・鳴門−徳島−高松−松山−大分 480 昭和60年 × ×
四国横断新幹線 岡山−児島・坂出−高知 150 昭和60年 × ×
九州横断新幹線 大分−熊本 150 昭和60年 × ×
長崎新幹線 福岡−佐賀−長崎 150 昭和54年 × ×
九州新幹線 福岡−熊本−鹿児島 270 昭和54年 × 新八代−鹿児島中央は開業
東九州新幹線 福岡−北九州−大分−宮崎−鹿児島 390 昭和60年 × ×

 完成予定年次は遅くても昭和60年となっています。これは、新全総の目標年次が昭和60年であるためです。
 もし、この計画が実行されていたら、昭和50年代は、建設業界の天国ですね。 実際、新全総施行時は土木関係の企業が大きく伸びた時期なのですが。

 さて、このような計画を策定した新全総の時代背景としては、いざなぎ景気の真っ只中でした。 国土を発展させるためには巨額な費用を投じても、将来のためになるという気運が高まっていたことがうかがえます。 さらに、策定される5年前の昭和39年に東海道新幹線の開業したことで、 新全総及び高速幹線鉄道計画に弾みがついたのでしょう。
 そして、新全総策定後の昭和48年そして昭和52年、 今までの好景気を吹き飛ばしてしまったオイルショックの影響から、 これらの計画の不可実性が浮き彫りになり、 新全総目標年次の昭和60年を待たずに三全総が昭和52年に策定されました。
 こうして、この大規模プロジェクトな新幹線計画は、大幅に再考せざるを得なくなったのです。

 今回は新幹線を例にとって紹介しましたが、他の事例もあると思います。 しかし、逆にある程度は整備されて良い影響をもたらした事例もあるでしょう。

 いつになるかわかりませんが、他の事例も調べたうえで、紹介したいと思います。

 ところで、五全総は、新国土軸の形成をひとつの目標としています。計画は新幹線ではなく自動車道ですが、 今回の新幹線計画とリンクする部分があるように感じませんか?


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